行政書士と中小企業診断士の違い|補助金申請は誰に頼むべき?
補助金の申請を専門家に手伝ってほしいと考えたとき、多くの経営者が迷うのが「行政書士と中小企業診断士、どちらに頼めばいいのか」という点です。両者はどちらも国家資格ですが、得意分野と法律上できることが異なります。この記事では、それぞれの資格の違いと、2026年1月に施行された行政書士法改正のポイント、そしてケース別の選び方をやさしく解説します。
結論:書類の「代理作成」は行政書士、事業計画の「中身づくり」は中小企業診断士
先に結論からお伝えします。補助金の申請書類を、報酬を得て本人の代わりに作成できるのは、原則として行政書士です(他の士業に法律で認められた業務を除く)。一方、採択審査で評価される事業計画の中身、つまり「この投資でどう売上を伸ばすか」といった経営戦略の部分を一緒に考えるのは、経営コンサルタントの国家資格である中小企業診断士の得意分野です。
つまり「どちらが上」という話ではなく、役割が違います。実務では、事業計画の内容を中小企業診断士と練り、申請書類の作成・提出を行政書士が担う、という分担や、両方の資格を持つ専門家に依頼するケースもあります。
行政書士とは:官公署に出す書類づくりの専門家
行政書士は、行政書士法にもとづく国家資格です。国や都道府県・市区町村といった官公署に提出する書類を、報酬を得て本人の代わりに作成することが、法律で行政書士に認められた業務(独占業務)とされています。
補助金の申請書も官公署に提出する書類にあたるため、「申請書類一式を代わりに書いて出してほしい」という依頼の受け皿になるのが行政書士です。許認可申請(建設業許可・飲食店営業許可など)と補助金申請をあわせて扱う事務所も多くあります。
中小企業診断士とは:経営コンサルタントの国家資格
中小企業診断士は、中小企業支援法にもとづいて経済産業大臣が登録する国家資格で、経営コンサルタント分野では唯一の国家資格といわれます。財務・マーケティング・生産管理など経営全般の知識を問う試験に合格した専門家です。
ただし、中小企業診断士には行政書士のような独占業務がありません。経営の診断や助言は資格がなくても行えますが、「中小企業診断士」を名乗れるのは登録者だけです。補助金との関わりでは、審査で評価されやすい事業計画づくりの支援や、経営課題の整理・数値計画の策定が主な役割になります。
違いを一覧表で比較
| 項目 | 行政書士 | 中小企業診断士 |
|---|---|---|
| 資格の根拠 | 行政書士法 | 中小企業支援法 |
| 資格の性格 | 官公署提出書類の作成専門家 | 経営コンサルタントの国家資格 |
| 独占業務 | あり(官公署提出書類の代理作成など) | なし(名称独占のみ) |
| 補助金での主な役割 | 申請書類の代理作成・提出、形式要件の確認 | 事業計画の中身づくり、経営分析、数値計画 |
| 向いている依頼 | 書類作成を任せたい、手続きを正確に進めたい | 計画の説得力を高めたい、経営相談もしたい |
なお、厚生労働省系の雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)は事情が異なり、申請書類の作成代行は社会保険労務士の業務とされています。「補助金は行政書士・診断士、雇用系の助成金は社労士」と覚えておくと整理しやすいです。
2026年1月施行の行政書士法改正で何が変わった?
2025年6月に「行政書士法の一部を改正する法律」が成立し、2026年1月1日に施行されました。この改正では、「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」官公署提出書類を代理作成する行為が行政書士の独占業務であることが、条文上より明確になりました。
つまり、コンサルティング料や成功報酬といった名目であっても、資格のない事業者が報酬を得て補助金の申請書類を丸ごと代わりに作成することは、行政書士法違反として罰則の対象になり得ます(2026年7月時点。詳細は総務省・日本行政書士会連合会の公表情報をご確認ください)。
一方で、経営に関する相談や助言、事業計画の内容についてのアドバイスは、この改正後も資格がなくても行えると整理されています。中小企業診断士が事業計画のブラッシュアップを支援すること自体は、引き続き可能です。変わったのは「書類そのものを報酬を得て代理作成できるのは誰か」が明確になった点だと理解しておきましょう。
ポイント
本記事は一般的な解説です。法改正の解釈や各資格の業務範囲、補助金の最新の要件・募集状況は、必ず総務省・中小企業庁・各士業団体などの公式サイトでご確認ください。
ケース別:どちらに頼めばいい?
実際の依頼先選びは、「自分がどこに困っているか」で考えるのが近道です。
- 事業計画のアイデアはあるが、書類づくりや手続きが不安 → 行政書士に申請書類の作成・提出を依頼
- 何に投資すべきか、計画の説得力に自信がない → 中小企業診断士に事業計画づくりから相談
- 経営全般の相談相手がほしく、補助金はその一部 → 中小企業診断士や認定経営革新等支援機関
- 雇用関係の助成金(厚労省系)を申請したい → 社会保険労務士
また、補助金によっては認定経営革新等支援機関の関与や確認書が求められるものもあります。依頼を検討する際は、その専門家が狙っている補助金の支援実績を持っているか、報酬体系(着手金・成功報酬)が明確かを確認しましょう。どの専門家に頼んでも、採択を保証することはできない点にはご注意ください。
まずは「自社が対象になる制度」を知ることから
行政書士と中小企業診断士のどちらに頼むかを決める前に、そもそも自社がどの補助金・助成金の対象になりそうかを把握しておくと、専門家との相談がスムーズになります。
補助金レーダーでは、会社の所在地・業種・従業員数・経営課題を登録すると、条件に合いやすい補助金・助成金をルールベースのスコアで一覧表示できます。対象になりそうな制度を無料で確認したうえで、無料相談から行政書士・社会保険労務士などの専門家の紹介まで進めることもできます。「誰に頼むか」で迷ったら、まず自社の選択肢を整理するところから始めてみてください。