IT企業が使える補助金・助成金まとめ|2026年の主要制度と選び方
システム開発、Web制作、SaaS運営——IT企業の経営でも、新サービスの開発費やエンジニアの育成費など、まとまった投資が必要になる場面は多いものです。この記事では、IT企業が「申請する側」として使える補助金・助成金を、2026年7月時点の情報で整理し、自社に合う制度の選び方を解説します。
IT企業と補助金の関わり方は2つある
IT企業と補助金の関係には、大きく2つの方向があります。1つ目は、自社が申請者となって補助金・助成金を受け取る「使う側」。2つ目は、顧客企業の補助金活用を支援して自社サービスの受注につなげる「売る側」です。
たとえばデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)では、IT企業が「IT導入支援事業者」として事務局に登録し、自社のソフトウェアやサービスをITツールとして登録すると、顧客は補助金を使ってそのツールを導入できます。この記事では主に1つ目の「自社が使う側」を扱いますが、売る側の視点も営業戦略として押さえておくと選択肢が広がります。
ポイント
本記事は2026年7月時点の情報にもとづく一般的な解説です。補助金額・補助率・締切などの要件や募集状況は変わることがあり、採択を保証するものでもありません。申請を検討する際は、必ず各制度の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
IT企業が使える主な補助金・助成金の一覧(2026年7月時点)
IT企業が申請者として使いやすい主な制度を、目的別に整理すると次のようになります。金額はいずれも上限の目安で、枠や従業員数などの条件によって変わります。
| 制度名 | 向いている使い方 | 補助上限の目安(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 自社サービス・パッケージ製品の開発、開発環境への投資 | 750万〜3,000万円(大幅な賃上げの特例で最大4,000万円) |
| 中小企業新事業進出補助金 | 受託開発から自社SaaSへの展開など、既存事業と異なる新事業への進出 | 従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 自社のバックオフィス用ソフト・AIツールの導入 | 通常枠で最大450万円 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模なIT事業者の販路開拓(サイト改修・広告・展示会など) | 原則50万円(特例で最大250万円) |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 新規事業やDXに向けたエンジニア・社員の研修費用 | 中小企業で研修経費の最大75%を助成 |
開発・新サービスへの投資に使える補助金
ものづくり補助金(自社製品・サービスの開発)
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。名前から製造業向けと思われがちですが、革新的なサービスの開発も対象で、ソフトウェア開発やシステム構築に活用された採択事例もあります。受託中心のIT企業が自社パッケージやクラウドサービスを開発する、といった投資が候補になります。
- 補助上限の目安:申請枠と従業員規模に応じて750万〜3,000万円(大幅な賃上げの特例で最大4,000万円。2026年7月時点)
- 補助率:中小企業で原則1/2(小規模事業者や要件を満たす場合は2/3)
- 直近の第23次公募は2026年5月に締め切り済み。2026年度は中小企業新事業進出補助金と統合した「新事業進出・ものづくり補助金」への再編が予定されているため、最新の公募状況は公式サイトで確認
中小企業新事業進出補助金(新しい事業への挑戦)
事業再構築補助金の後継として始まった制度で、既存事業とは異なる新しい事業への進出を支援します。たとえば「受託開発が中心だったが、自社SaaSを立ち上げて新しい市場に打って出る」といった転換が典型的なイメージです。補助下限額が750万円のため、ある程度規模の大きな投資を伴う事業計画が前提になります。
- 補助上限の目安:従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円。2026年7月時点)
- 補助率:原則1/2(大幅な賃上げを行う場合は補助上限が引き上がる特例あり)
- 「既存事業の延長」と見なされる計画は対象になりにくいため、新規性の整理が重要
- 2026年度はものづくり補助金と統合した「新事業進出・ものづくり補助金」への再編が予定されているため、最新の公募状況は公式サイトで確認
小規模事業者持続化補助金(小さく始める販路開拓)
従業員数の少ない小規模事業者(商業・サービス業では常時使用する従業員が少人数の事業者。個人事業主も含む)が、販路開拓に取り組む費用を支援する補助金です。フリーランスに近い規模のIT事業者や創業まもない開発会社が、自社サイトの改修、広告、展示会出展などに使う例が多い制度です。2026年7月時点では一般型・通常枠(第20回)の公募要領が公開されており(申請受付は2026年11月開始予定)、補助上限は原則50万円・補助率2/3で、特例により最大250万円まで引き上がる場合があります。
自社のIT投資・バックオフィスに使える補助金
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
2025年度までの「IT導入補助金」が、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更された制度です。IT企業自身も中小企業の要件を満たせば「使う側」になれます。たとえば、会計・労務・プロジェクト管理などのバックオフィス用ツールやAI搭載ツールを導入する費用が対象です。通常枠で最大450万円・補助率は基本1/2(2026年7月時点)で、通常枠のほかインボイス枠・セキュリティ対策推進枠などがあります。対象は事務局に登録済みのITツールに限られ、IT導入支援事業者と共同で申請します。
また冒頭で触れたとおり、自社がIT導入支援事業者として登録し、自社製品をITツールとして登録すれば、顧客が補助金を使って自社サービスを導入できるようになります。「使う」だけでなく「売る」武器にもなる、IT企業にとって二面性のある制度です。
エンジニア育成・採用に使える助成金
補助金(主に経済産業省系・投資向け)と並んで、厚生労働省系の「助成金」も見逃せません。雇用や人材育成が目的で、要件を満たせば比較的受給しやすいのが特徴です。
- 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース):新規事業やDXに必要な知識・スキルの研修費用を助成。2026年7月時点で中小企業は経費の最大75%が助成され、訓練期間中の賃金の一部も助成されます。2026年度(令和8年度)までの期間限定の予定のコースのため、最新の実施状況は厚生労働省の公式サイトで確認してください
- 人材開発支援助成金(人材育成支援コースなど):新人エンジニア研修や資格取得など、計画的な職業訓練の費用を助成
- キャリアアップ助成金:契約社員などの非正規雇用の社員を正社員化した場合などに助成
助成金は「研修や雇用の前に計画届を出す」など、着手前の手続きが必要なものが多い点に注意してください。研修を始めてから気づいても、さかのぼって申請することは基本的にできません。
IT企業が申請するときの注意点
- 補助金は「後払い」:開発費や導入費はいったん全額自社で支払い、実績報告のあとに振り込まれるため、資金繰りの計画が必要
- 交付決定前の契約・発注は原則対象外:採択・交付決定を待ってから開発や購入に着手するのが基本
- 自社開発の人件費が対象になるかは制度ごとに異なる:外注費のみ対象の場合もあるため、対象経費を公募要領で確認
- 審査がある:申請すれば採択される制度ではなく、事業計画の内容が結果を左右する
- 電子申請には「gBizIDプライム」が必要:取得に時間がかかる場合があるため、早めに準備する
自社が対象になりそうな制度を、まず一覧で確認してみよう
IT企業が使える補助金・助成金は、開発投資向けの大型のものから、研修費用の助成まで幅広くあります。それぞれ対象・金額・スケジュールが異なるため、「自社の投資はどの制度に当てはまるのか」を最初に整理しておくことが、準備をスムーズに進める近道です。
補助金レーダーでは、会社の所在地・業種・従業員数・経営課題を登録すると、自社が対象になりやすい補助金・助成金をルールベースのスコアで一覧表示できます。無料で対象になりそうな制度を確認でき、気になる制度が見つかったら、無料相談から行政書士・社労士などの専門家紹介まで進むことも可能です。「うちの開発投資に補助金を使えないか」と考え始めた段階の方こそ、まず全体像の確認から始めてみてください。