社労士と行政書士どちらに頼む?助成金と補助金の違いで決まる
「助成金をもらいたいけれど、社労士と行政書士のどちらに相談すればいいの?」という質問は、実はとても多い悩みです。答えはシンプルで、使いたい制度が「助成金」か「補助金」かで、頼むべき専門家がほぼ決まります。この記事では、助成金と補助金の違いを整理したうえで、社労士と行政書士それぞれの役割と、依頼先の選び方をわかりやすく解説します。
結論:助成金は社労士、補助金は行政書士などが基本
先に結論からお伝えします。厚生労働省が管轄する雇用関係の「助成金」の申請を代行できるのは、原則として社会保険労務士(社労士)だけです。一方、経済産業省や中小企業庁などが管轄する「補助金」には、そのような独占資格はなく、行政書士や中小企業診断士、税理士などが申請支援を行っています。
つまり「どちらの専門家が優れているか」ではなく、「自社が使いたい制度がどちらの種類か」で依頼先が決まる、というのがこのテーマの本質です。まずは助成金と補助金の違いから見ていきましょう。
助成金と補助金の違いをおさらい
助成金と補助金は似た言葉ですが、管轄する省庁と制度の性格が大きく異なります。ざっくり整理すると次のとおりです。
| 項目 | 助成金(雇用関係) | 補助金 |
|---|---|---|
| 主な管轄 | 厚生労働省 | 経済産業省・中小企業庁・自治体など |
| 目的 | 雇用の安定・人材育成・職場環境の改善 | 設備投資・販路開拓・新事業などの後押し |
| 受給の考え方 | 要件を満たせば受給できる可能性が高い | 審査で採択・不採択が決まる(競争あり) |
| 申請の中心 | 労務管理の書類(雇用契約書・賃金台帳など) | 事業計画書 |
| 申請代行できる専門家 | 社労士(独占業務) | 独占資格なし(行政書士・診断士など) |
たとえば「キャリアアップ助成金」のように、非正規社員の正社員化など雇用に関する取り組みを支援するのが厚生労働省系の助成金です。一方、「小規模事業者持続化補助金」「新事業進出・ものづくり補助金(旧・ものづくり補助金)」「デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)」のように、設備投資や販路開拓を支援するのが経済産業省・中小企業庁系の補助金です。補助金は名称や枠組みが年度ごとに見直されることが多いため、最新の制度名・公募状況は公式サイトで確認してください。
見分け方のコツとして、制度名に「雇用」「キャリアアップ」「職業訓練」「高齢者」「両立支援」など人に関する言葉が入っていれば厚生労働省系の助成金、「販路開拓」「設備投資」「新製品開発」「DX」など事業に関する言葉が入っていれば補助金であることが多い、と覚えておくと便利です。
助成金の申請代行は社労士の独占業務
厚生労働省系の助成金は、労働関係の法令にもとづく申請書類を扱います。こうした書類の作成・提出代行は、社会保険労務士法により社労士の独占業務とされています。そのため、行政書士やコンサルタントが報酬を受け取って雇用関係助成金の申請を代行することは、法律上できません。
社労士に依頼するメリットは、単なる書類作成の代行にとどまりません。
- 就業規則・雇用契約書・賃金台帳など、審査で見られる労務書類を整えてもらえる
- 自社の雇用状況に合わせて、使える助成金を提案してもらえる
- 計画届の提出から支給申請まで、長期にわたる手続きを管理してもらえる
- 労務管理そのものの改善につながり、助成金以外の面でもプラスになる
助成金は「申請の前から」要件が始まっていることが多い制度です。たとえば取り組みを始める前に計画届を出す必要があるものもあり、順序を間違えると受給できないことがあります。雇用関係の助成金を検討するなら、早めに社労士へ相談するのが安全です。
補助金の申請支援に独占資格はない
一方、補助金の申請支援には、社労士における助成金のような独占資格はありません。行政書士、中小企業診断士、税理士、公認会計士、あるいは資格を持たない補助金コンサルタントまで、さまざまな立場の人が支援を行っています。
補助金の審査の中心は「事業計画書」です。自社の強みや市場の分析、投資の収益性などを説得力のある計画にまとめる力が問われるため、書類作成の専門家というより、事業計画づくりの経験が豊富な支援者を選ぶことが大切です。
- 行政書士:官公署に提出する書類作成の専門家。補助金の申請書類づくりを支援する事務所が多い
- 中小企業診断士:経営コンサルティングの国家資格。事業計画のブラッシュアップが得意
- 税理士・金融機関など:認定経営革新等支援機関として、確認書の発行や計画づくりを支援
なお、補助金の多くは電子申請システムを使って事業者自身が申請する建前になっており、支援者はあくまで計画づくりや書類準備の「サポート役」です。また、過去に公募された事業再構築補助金(2025年の第13回公募で新規募集を終了)のように、補助金によっては認定経営革新等支援機関の関与が申請の要件になることもあります。依頼前に、その補助金での支援実績があるかを確認しましょう。
依頼先を選ぶときのチェックポイント
「助成金なら社労士、補助金なら行政書士など」という大枠が分かったら、次は個別の依頼先選びです。次の点を確認すると失敗しにくくなります。
- 使いたい制度(またはよく似た制度)の支援実績があるか
- 報酬体系が明確か(着手金・成功報酬の割合、支給されなかった場合の扱い)
- 「必ず受給できる」「誰でももらえる」といった断定的な勧誘をしていないか
- 助成金なのに社労士資格のない業者が「代行します」と言っていないか
- 申請後の実績報告や書類保管まで見すえたアドバイスがあるか
特に注意したいのが、電話やDMで「御社は助成金がもらえます」と勧誘してくる業者です。雇用関係助成金の代行は社労士の独占業務なので、無資格の業者に依頼すると手続きをやり直すことになったり、不正受給に巻き込まれたりするリスクがあります。受給を保証するような営業トークには乗らないようにしましょう。
ポイント
本記事は一般的な解説です。助成金・補助金の要件や募集状況、各士業の業務範囲の詳細は変わることがあります。最新の情報は必ず厚生労働省・中小企業庁などの公式サイトや、各士業の窓口でご確認ください。
まずは自社が使えそうな制度を知ることから
社労士と行政書士のどちらに頼むかは、「自社がどの制度を使うか」が決まって初めて答えが出ます。逆にいえば、依頼先選びの前に「そもそも自社はどんな補助金・助成金の対象になりそうか」を把握することが最初の一歩です。
補助金レーダーでは、会社の所在地・業種・課題を登録すると、自社が対象になりやすい補助金・助成金をルールベースのスコアで一覧表示できます。気になる制度が見つかったら、無料相談から行政書士・社労士などの専門家の紹介につなげることも可能です。「助成金なのか補助金なのか分からない」という段階からでも使えるので、依頼先選びの前の整理にお役立てください。